檸檬(ねたばれ)


読みました。
一貫して主人公(はたまた周りも)健康でなく精神を病んでいて(梶井基次郎も病弱で、31歳で亡くなっている)
鬱屈した話しばかりでした。


特に印象に残ったお話


Kの昇天
「K君は月へ登ってしまったのだ」
Kが溺死したと知らされる。療養先で出会ったK君は影に自分を見ていた。
《影の自分は彼自身の人格を持ちはじめ、それにつれて此方の自分は段々気持ちがはるかになって、或る瞬間から月へ向かって、スースーッと昇って行く。》
《「哀れなる哉、イカルスが幾人も来ては落っこちる。私も何遍やってもおっこちるんですよ」そう云ってK君は笑いました。》


主人公の確信が怖い。


・冬の蠅
日光浴の際、弱った冬の蠅達を眺める日課を持った主人公。
《こちらが「もう落ちる時分だ」と思う頃、蠅も「ああ、もう落ちそうだ」という風に動かなくなる。そして案の定落ちてしまう。》
助けるわけでも邪魔するわけでもない。それはただの共存であったけれど、気まぐれで何日も家を空けて帰ると、蠅が寒さと飢えで全部死んでしまっていた。
《私はそのことにしばらく憂鬱を感じた。それは私が彼等の死を傷んだためではなく、私にもなにか私を生かしそしていつか私を殺してしまうきまぐれな条件があるような気がしたからであった。》


蠅…。


収録された20篇全部面白かったです。
読み終わって良かった。でもちょっと勿体ない。
大事な本になりそうです。